Long


鵺鳥の片恋

[ 異世界FT / 恋愛 / 双子 ]   

  神々の住まう高天原と死者の住まう黄泉の国。
  その二つの世界の間にあるとされる世界、地上の国に人々は生きている。

  ――ずっとずっと昔から、此の空に、焦がれていた

  果てし無い空の彼方で、数多の祈りが交差する。



そして再び夢を見る

[ 異世界FT / 恋愛 / 企画参加作品 ]   

  南に広がる大海、ルベウスの洋上。
  潮騒と海風を感じながら、或る少女と青年は新たな物語を紡ぐ。

  ――誰かの声が聞こえた様な、そんな気が、したんだ

  激情の赫海に、二人の声が木霊する。



You are, I am

[ 異世界FT / 西欧風 / 皇女 ]   

  現在加筆修正の為序章のみ公開中。




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7/7
 それは同情ですか、憐憫ですか。問うのでもなく、咎めるのでもなく、唯言葉を音に乗せる様に、少女はそう呟いた。対する男は困った様に眉尻を下げ、曖昧に小さな笑みを口許に滲ませる。いいや、と、否定の言葉を紡ぐと、男はそっと少女を腕(かいな)に抱く。僕という男の単なる我儘だよ。そう囁いて。


7/3
 あの方は変わってしまわれた。肩を並べ、夢を語り、共に歩んでいた日々が遠い。眩しかった、希望に溢れていた時は戻らない。あの方は何時しか遠ざかり、今やその背中を辛うじて目で追うしかない。あの方は変わってしまわれた。或いは己が変わったのか。何れにせよ、最早この道は交わらない。永久に。


6/12
 あなたなんて嫌いよ。浮ついていてだらしなくて誠実さの欠片もない。そんなあなたが、わたしは、大嫌い。乾いた声で勉めて静かにそう言うと、目前の男は、知ってるよ、と言って小さく笑った。
 気取られない様に僅かに視線を逸らすと、そう言う君は何時だって真面目で誠実だね、と返された。相も変わらず掴みどころのない彼の笑顔。あら、有難う。意地を張った皮肉めいた口調。声が震えているのが自分でも分かる。
 本当は、知っているのだ。何より不誠実なのはわたし。真っ直ぐなのは、あなた。


5/22
 音を立てず気配を消し、ゆっくりと背後から妻に近付く。そして何の前触れも無くその小さな躯を腕の中に収めた。一瞬、驚嘆して息を呑んだ様な声が聞こえたが、背中に感じる温もりが良く知った人のそれだと分かったのだろう、彼女はすっと力を抜いて体重を此方に預けてきた。
 衣に焚き染められた香が鼻を擽る。彼女の柔らかい髪に顔を埋め、男はふっと目を閉じた。御上(おかみ)、と妻が声を上げる。どうかなさったのですか、と問われるが、男は何も返さずに妻の項に口付けた。ひゃ、と小さな悲鳴が漏れ聞こえる。男は思わずくつりと笑みを零し、妻の細い首筋に唇を這わせた。